日本でも大手にひけをとらない会社、
未来工業をカンブリア宮殿でとりあげていた。
社長さんは一見態度がでかく怖そうなおじいさん。口調も結構荒い。
だけど経営者としての彼の行動、言動には日本企業にはまずない何かがあった。
この未来工業は徹底的に他企業との差別化を図るように社員に呼びかけている。会社中至る所に、「常に考える」と書かれた看板が掲げられ、それはトイレの鏡にまでシールで貼られている程だ。
他にもこの会社の変わった点は沢山ある。
例えば、コンセントなど使っていないときは必ず抜かれ、廊下なども人が通っていないときは真っ暗。いわゆる超ドケチ。
かと思えば、社員が何か提案書を出せば、採用不採用に関わらず500円で買い取る。多い人では月に200枚の提案書を出していた。そうすることで社員に常に考える事の喜びを覚えさせるのだと社長は言う。
また、就業時間は7時間15分。社員は皆残業なしで5時半には帰宅。社長の理念では、「食って寝るだけならブタでも牛でもどんな動物でもやってる。人間は人間らしい生活を送らなきゃいけない。しかし今の日本企業の社員は動物と一緒、会社から遅く帰って、食って寝る、そしてまた出勤。社員を早く帰らせれば6時までに帰って飯が食える。夜だけでも最低4時間は自分の好きな事をする、人間らしい生活が出来る。それによって会社での生活も向上する。」なるほど、私生活が潤う事で社員としての生活も潤うという事。
会社にはクラブ活動があり、3人以上まとめてクラブを構成すると活動費として1万円が支給される。昼休みには社内の一室でヨガやエクササイズを行う社員も見られる。
驚くべきは給料と社員旅行。
まずこの会社で働く人780人全てが社員。アルバイトは一人もいない。
給料は岐阜の田舎であるに関わらず平均600万以上の高水準。5年に一度の社員旅行は全て会社持ちで海外旅行。オーストラリアやエジプトなど、一回の負担は1億以上だという。
そこまでして社員を大切にする会社は、まず日本には他にはないだろう。
社長も言っていたが、日本企業の経営者はリスクを恐れているからだと思う。多分この会社をまねてみたい、こうなりたい、と思っている経営者はいるだろうが、実行に移して、社員が怠けてしまったらどうしよう、会社がこんなに社員にお金を渡すのは嫌だ、など、やはり会社存続中心に物事を考える者が多い。
未来工業の社長は、「日本の経営者は、社員を馬のように扱う。ー走ったらごほうびにニンジンをやる。ノルマを達成してこい、というタイプ。でも私は、社員を人間として扱う。人間は、馬と違う。人間には、ニンジンやるから走れ、と言う。そもそも日本人は、よくしてもらったら恩を返すという性質があるからそれを生かす経営をする。」
インタビューでも、会社に本当に感謝している、不満なんて一切ないという社員ばっかりだった。ノルマはないが、高額の給料をもらい、皆が切磋琢磨会社をよくしよう、としている環境で働いていれば自然と色んな事を向上させる為に働くようになる。
「私は社員に給料を与えてるんじゃない。入ってきた分け前を分けているだけ。少なければ自分たちの取り分が減るのだから給料がもっと欲しければもっと働いて会社の業績を伸ばせばいい。」
納得。
こんな企業がもっと生まれてこなければ日本はこのまま沈没していくだろう。社員を蟻のように働かせ、精神的余裕や幸せを蝕んでいく企業経営者は、一歩踏み出して、「人」と働いているのだという事を考え直す必要があると思う。日本企業の社員のあり方は海外企業の社員から見ても明らかに不健康だと思われている。よく、"inefficient"だと言われる。早朝出勤するが前の夜も遅くまで残業していたせいで眠くて仕事が捗らない。日中にうつろな顔で喫茶店で何時間も過ごすサラリーマンも何度も目にしたことがある。大体一日8時間集中して仕事を毎日して成果が上がらないのならそれは経営そのもの、人員、その仕事に当たる人数など、経営者側の問題になってくるべきだと思う。日本を再び再生させる為に、経営者はこの未来工業の経営から学ぶ点が沢山あるように感じた。